プラークは、食べ物のカスのように思われている方がいますが、実際は歯周病菌や虫歯菌とその代謝産物の塊です。
プラーク1mg中に1億個以上というとんでもない数の微生物が存在すると言われています。※このプラークが付着していると、歯肉は腫れ歯を支えている骨が吸収し歯がぐらぐらしてきます。
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プラーク(歯垢)は歯周病を引き起こす最も重要な因子であり、歯肉炎・歯周炎の初発因子です。歯肉炎、歯周炎はプラークを取り除くことにより改善してきます。歯周病の発症・進行には毎日の生活習慣にあるリスクファクター(危険因子)も密接に関わっています。
プラークは、食べ物のカスのように思われている方がいますが、実際は歯周病菌や虫歯菌とその代謝産物の塊です。
プラーク1mg中に1億個以上というとんでもない数の微生物が存在すると言われています。※このプラークが付着していると、歯肉は腫れ歯を支えている骨が吸収し歯がぐらぐらしてきます。
口腔内におけるバイオフィルムは歯の表面に溜まるプラークのことです。バイオフィルムは隙間が狭いため消毒剤や抗菌剤または、唾液の抗菌物質や白血球等が内部に入っていけずなかなか簡単には除去できないのです。
このプラークが固まったものが歯石です。バイオフィルムや歯石は、細菌にとって非常に生息しやすい温床や培地になるのです。
普段の歯磨きではプラークコントロールが充分でない部分が必ずあります。
それを取り除くのが私達(歯科医・歯科衛生士)の行っているPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)です。
歯周病はバイオフィルム感染症ですが、日々のプラークコントロールとPMTCによりコントロールすることができます。
痛みもないのに通院するのは、面倒かもしれませんが、定期的にPMTCに受けることにより生涯自分の歯で噛むことが可能になります。PMTCを定期的に受けることは、美容院に通うことと同じような感覚になってもらえるといいと思います。
歯石は、プラークが歯周病菌を抱えたまま石灰化して固まったもので、歯ブラシでは除去できません。表面がザラザラして、さらにプラークが溜まりやすくなります。
歯肉の下で溜まる歯石です。歯肉縁下歯石は,無機物を血液から供給されるので茶褐色です。また、歯の根の部分に強固に付着しているので、歯肉縁上歯石より除去するのは大変です。
歯肉の腫れが引くと、このように見えてくることがありますが、深い歯周ポケットの場合、麻酔をしてルートプレーニングという処置で除去しなければなりません。
歯周病は、歯を支えている土台を破壊する生活習慣病です。知らないうちに進行し、症状が悪化するまで自覚しにくい病気です。放置しておくと、歯茎が腫れ・膿がでたり激しい痛みが出たりします。
最終的には、歯がグラグラし抜け落ちてしまいます。最近の報告では、それだけではなく歯周病はさまざまな全身の病気を引き起こすことがわかってきました。
歯周ポケットの中に、歯石やプラークを付けたままにしておくと、体の抵抗力が弱ったときに歯周病菌の力がまさって活動期に入ります。
活動期には歯茎から膿がでたり、腫れたり、激しく痛みが出たりします。また、歯を支える骨等がなくなり、歯周ポケットが深くなります。
歯を支えている骨は吸収しておらず歯肉のみの炎症です。しっかりとした歯ブラシと歯石を除去することで治ります。
歯肉の炎症が進み、歯を支えている骨の吸収が始まっています。歯肉の下にある歯石を機械的に除去(ルートプレーニング)する必要があります。
歯を支えている骨の吸収が進んでいます。歯肉が腫れたり、歯がグラグラするといった症状もで始めます。ルートプレーニングだけでは治らないケースもでできます。
歯を支えている骨がかなり吸収しています。ケースよっては抜歯となる可能性もでてきます。より専門的な治療が必要です。
成人で歯を失う原因の第1位です。
歯周病は歯肉炎と歯周炎にわけられますが、10代はすでに約60%近くの人がかかっています。50代から減少し始めるのは歯がなくなる人が増えるからです。成人では歯を失う原因の第1位です。痛みがなくほっとかれている場合がほとんどです。
歯周病の原因はプラーク(歯垢)です。このプラークは細菌の塊なので、患者様によっては「薬(抗菌薬)では治らないの?」と聞かれます。
細菌を殺すうがい薬で、うがいをすれば治りそうな気がするという理論です。しかしながら、実際には抗菌薬単独ではあまり効果がないこともわかっています。
それは、細菌がバイオフィルムを形成しているからです。バイオフィルムは表面が糖の膜で覆われており、薬剤が内部に浸透しにくいのです。
したがって、機械的にバイオフィルムを破壊する必要があるわけです(PMTC・スケーリング・ルートプレーニングなど)。バイオフィルムを機械的に破壊することによって、薬剤の威力が発揮するようになるのです。
※バイオフィルム中の細菌には高濃度の抗菌剤でないと効果がないことが示されています。
痛みがあったり、被せ物が外れたりなど緊急性のあるものから優先して処置します。
X線写真・歯周ポケットの測定・歯肉からの出血・動揺度・咬み合わせ等の検査・生活習慣のチェック・歯周病原菌の検査等をさせていただき情報を集めます。
検査の結果から現在の歯周病の状況やどのように治療していくかを説明させていただきます。患者様の理解と同意を得て治療にはいります。
歯周病は生活習慣病なので、患者様自身の理解が非常に大切で治療の成否を握ると言っても過言ではないでしょう。
本格的な治療開始です。歯周病は患者様自身と歯科医・歯科衛生士が協力して治していきます。この初期治療では歯周病の最大原因であるプラーク、あるいは歯石を取り除き歯肉(歯ぐき)の炎症の改善をはかることを第一とし行われます。
磨き残しをチェックし、歯ブラシ・歯間ブラシ・フロス等の正しい使い方を指導させていただきます。
歯石をとっていきます。ポケットの深い所は、麻酔が必要な場合があります。全部の歯が歯周病に罹患している場合、通常4~6回に分けて歯石をとっていきます。
初期治療後に一定期間待ち、その治療効果を判定のために再度検査します。検査結果をもとに、今後の見通しを説明させていただきます。
初期の歯周病の方はここまでで治ってしまい、定期検査に入ります。深い歯周ポケットが残っている方は、必要に応じて歯周外科手術を行います。
深い歯周ポケットが残ってるところなどに行います。この手術には、代表的な歯肉剥離掻爬術(Flap operation)などさまざまな手術法があります。
必要に応じて、失った骨をより積極的に再生させる方法(再生療法)としてエムドゲインやGTR法などを行います。
歯周外科手術後に一定期間待ち、その治療効果を判定のために再度検査します。定期検査の間隔を決定していきます。
歯周病(歯槽膿漏)の治療が終了しても、きちんとしたメンテナンスがされていないと再発してしまいます。
アメリカ歯周病学会では,「メンテナンスは歯周病治療の延長であり, 新しいあるいは再発する異常や疾患を早期発見し、治療しようとするのである」とし、その期間は、3ヶ月ということが歯肉の健康を維持するのに効果的であると、多くの論文で示されています。
しかしながら、「個々の患者の歯周病(歯槽膿漏)に対する感受性や患者のコンプライアンス(協力度)が異なるために、患者ごとの異なったメンテナンス期間を選択することが必要かもしれない」としています。
歯周ポケットの深いところには、歯茎の下に歯石が付着しています。また、歯根には細菌が出す毒素が浸透しています。こういった汚染物質を機械的に取り除く処置をルートプレーニングと言います。
ポケットの深い部位では、局所麻酔を行い、ポケット内部に専用の器具を入れ、汚染物質を取り除いていきます。通常、麻酔が切れたとき、若干の違和感はありますが、鎮痛剤を朊用することは少ないです。
口腔衛生指導を伴った、スケーリング・ルートプレーニングによる機械的な汚染物質の除去は、何十年もの間、最も基本的な歯周病治療として位置づけられています。
また、多くの臨床研究からも、歯周病患者において、歯茎の炎症を軽減し、ポケットが浅くなることが一貫として示されています。さらに、この治療により歯茎の下の細菌叢(さいきんそう)が病的な状態から健康な細菌叢へ変化するという証拠が明らかになっています。
そのため、アメリカ歯周病学会のコンセンサスレポート(統一見解)では、スケーリング・ルートプレーニングは、通常ほとんどの歯周病に対して推奨される第一選択の治療法であるとしています。
スケーリング・ルートプレーニングの効果について2002年にCobb C Mが多くの論文から根拠のある論文を選び、報告しています。
※歯周ポケットの減少は、治療前の歯周ポケットが4mm以上の場合、スケーリング・ルートプレーニングの後に、1~3月以内に大きく変化すると報告されています。
歯周病の初期治療(スケーリング・ルートプレーニング)でなおりきらなかった部位には歯周外科手術でなおす必要がある場合があります。
歯肉剥離掻爬術(Flap operation)と呼ばれる方法で、歯石がよく見えるように歯茎を切り開いて徹底的に歯石を取り除く方法が行われ、他にもいろいろな方法が行われます。
スケーリング・ルートプレーニングとは違い、直接悪い部分を見ながら取り除くことが可能で取り残しが少ないです。
※この方法に加えて、骨移植やGTR法、エムドゲイン法を行って積極的に失った骨を再生させることも同時行うことがあります。
歯周初期治療のスケーリング・ルートプレーニングにより治りきらなかったところには歯周外科手術が必要になる場合があります。
これは深い歯周ポケットの場合、歯石を完全に取り除くのは難しいからです。
実際の骨吸収は、山があったり、谷があったり複雑な形態をしていて、手探りで盲目的に歯石を除去しているスケーリング・ルートプレーニングには限界があるからです。また、歯根(歯の根っこ)も部位によってはかなり複雑な形態をしています。
歯肉剥離掻爬術(Flap operation)という方法で直接、悪い部位を見て、汚れを取り除くと確実です。
スケーリング・ルートプレーニングにより歯石はどこまで除去できるかは、単根歯(前歯)と複根歯(奥歯)では除去率に差があるので分けて考えてみたいと思います。
GTR法は、1982年にS.Nymanらによって報告された新しい治療方法です。この方法は歯の周りに失った骨などを、より積極的に再生させるという方法です。
歯肉の下に遮断膜を設置し、膜の下に骨が再生するスペースを作ってやります。
このスペースがないと骨の再生スピードは遅いため、上皮や歯肉が入り込んでしまいます。従来の治療法ではこのような積極的な骨再生は困難でした。
遮断膜は、当院では吸収性を使用しています。骨移植を併用すると骨の再生がより得られます。
1998年にLaurellらによって従来の治療との比較が報告されています。(単位:mm)
エムドゲイン®は、1997年にHammarstöm LやHeijl Lらによってコンセプトが紹介された新しい方法です。この方法は歯の周りに失った骨などを、より積極的に再生させるために、エムドゲイン®(Emdogain®)という生体材料を使用する方法です。
エムドゲイン®ゲルとは、スウェーデンのビオラ社で開発され、科学水準に基づく高い安全性確保の下、幼弱ブタ歯胚組織から抽出した生体材料です。
この主成分(エナメルマトリックスデリバティブ)は、子供の頃、歯が生えてくる時に重要な働きをするタンパク質の一種です。2005年5月現在、世界39ヶ国で使用されています。
※失った組織をより積極的に再生させる方法としてGTR法とエムドゲイン®がありますが、同等の再生量が報告されています。
局所麻酔下にて歯茎を切り開き、歯石などの感染部を取り除きます。
骨欠損部にエムドゲイン®ゲルを塗ります。
縫合して、手術は終了です。
リグロスは、ヒト型塩基性線維芽細胞増殖因子(GF-2)を有効成分とする歯周組織再生剤です。大阪大学の村上伸也先生を中心に 開発され、2016年9月にリグロスの吊称で製造販売の承認が取得されました。その後2016年11 月にリグロス® は薬価収載されました。
リグロス®の開発の経緯においては,臨床試験のみならず10年以上の時間を要して詳細な非臨床研究が行われ、その薬理作用の検証が行われてきました。
その結果リグロスを歯周組織欠損部へ局所投与することにより,①欠損部周囲に残存する歯根膜および歯槽骨からの間葉系細胞の増 殖・遊走が活性化され治療部位における組織幹細胞数が増加すること②投与部位における血管新生と細胞 外基質産生が活性化され再生にふさわしい環境が整備されることが示され,リグロス® 投与部位において歯周組織再生が促進されることが明らかとなっています。
※新生骨の増加量において、リグロス®はエムドゲイン®に対する優越性も報告されています。
局所麻酔下にて歯茎を切り開き、歯石などの感染部を取り除きます。
欠損部にリグロス®を塗る
縫合して、手術は終了です。
2018年7月、「かかりつけ医に通院していて、そろそろ前歯の抜歯を検討されているが、抜歯しないで治療して欲しい。」と紹介で来院された患者様のケースです。
当院はこのようなケースで来院される方が多いです。
初診時の写真の赤矢印の部分の歯周ポケットは、最深部は9mmで重度歯周炎で骨喪失量も非常に大きいのがわかります。
全ての技術と医療機器を駆使し、リグロス+骨移植+GTR法+Er:YAGレーザーを併用して手術を行いました。歯を支えている支持骨は再生されました。現在、定期クリーニングで経過をみているところです。
ここまで骨が再生すれば、抜歯する必要はありません。もう少し早く再生療法ができれば、さらに再生が望めたと思われます。後は日常の口腔ケアと定期クリーニングに通院していただけるかが鍵になります。
当院では、なるべく抜歯をしない方法を選択し、歯周病治療とマイクロスコープによる根管治療を非常に重視しています。
家づくりに例えれば土台となる基礎工事で見えないところですがとても重要な部分です。この土台の部分が精度よく治療されていないと、どんなに見た目のよい美しい歯を被せても決して長持ちしにくいのです。このような再生療法は適応が限られますが、条件が整えば歯を抜かずに治療ができる非常に有効な方法になります。
上正な噛み合わせは歯周病を進行、増悪させることがあります。また歯周病により歯周組織を失うと、歯の病的な移動が起こることがあります。主に次のようなことが起こります。
このような歯の病的な移動により上正咬合になり、ますます歯周病を悪化させる悪循環が起こります。
下の写真のケースでは噛み合わせが深く、下の前歯が見えません。下の前歯が上の前歯を突き上げているのです。
治療後は下の前歯がみえています。
こういったケースでは、歯周病の治療だけでは、治りませんし、隣の歯と連結しただけでは、いずれ歯を失うことになってしまいます。歯周病の治療と矯正治療(咬合治療)の両方が必要になります。
歯を支えている骨が少ないので、通常の矯正治療よりもデリケートな力で行わねばなりません。また矯正治療中も細かい歯肉の観察とブラッシングが必要となります。歯並び(かみ合わせ)が悪いということは将来的なリスクを負っているということです。
以上の事が、改善され長期的な歯の保存に繋がります
治療前は奥歯が前に傾いています。いったん倒れはじめると、咬み合わせの力により、だんだん前方に倒れてきてしまいます。奥歯が倒れはじめると前歯は押されて隙間があき、出っ歯になります。前歯全体を接着剤で固定するのも一つの治療法ですが、根本的な治療には繋がりません。
歯周外科治療を行っても、その後きちんとした清掃管理が行われてないと、歯茎の状態が改善しないどころか、かえって悪化する危険があります。特に、手術後間もない時期の歯周組織は脆弱なので、プラークコントロール次第で治癒に影響がでてきます。再生療法を行った場合などはより注意が必要です。
Lindhe,J(2001)らは術後の徹底的なプラークコントロールと専門家による短い間隔での監視が、最も理想的な治癒を得るための最重要事項であるとしています。
歯周外科後、メンテナンス群は2週間に一度のPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)を行う。コントロール群は6ヶ月に一度の除石が行われ、6・12・24ヶ月後に再検査が行われた。
Nyman, s., Rosling,B., Lindhe, J. (1975) Effect of professional tooth cleaning on healing after periodontal surgery. Journal of Clinical Periodontology 2,80-86.(改変引用)
以上のように、歯周外科後に、きちんとしたブラッシングとメンテナンスを行われれば、良好な結果が示されていますが、きちんとしたメンテナンスが行われなければ悪化することが示されています。
歯周外科後、メンテナンスは2週間に一度のPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)を行い、24ヶ月後再検査が行われた。
Rosling,B., Nyman, s.,Lindhe, J. (1976) The effect of systematic plaque contol on bone regenaration in infrabony pockets. Journal of Clinical Periodontology 3,38-53.(改変引用)
骨の再生には6ヶ月~12ヶ月は必要と考えれていますが、Rosling(1976)らはブラッシングとメインテナンスがきちんと行われた場合と行われなかった場合とを比較して、骨欠搊の状態にもよりますが、骨の再生量にも大きく影響があることを示しました。
歯周病(歯槽膿漏)の治療が終了しても、きちんとしたメンテナンスがされていないと再発してしまいます。痛くなってから来院するのでは、歯周病がかなり進行していることがほとんどです。
アメリカ歯周病学会では、「メンテナンスは歯周病治療の延長であり、新しいあるいは再発する異常や疾患を早期発見し、治療しようとするのである」としています。
また、深い歯周ポケットを残したままメンテナンスに入ると、深い歯周ポケットは歯磨きができず、再び歯周病菌(バイオフィルム)が繁殖してしまいます。こういったことを防ぐためにメンテナンスが必要になります。
※メンテナンスを受けた人は89%が現状を維持でき、メンテナンスを受けないと89%の人が悪化しています。
3ヶ月とし、大部分の患者において歯肉の健康を維持するのに効果的であることが示されてきています。
しかしながら、「個々の患者の歯周病に対する感受性や患者のコンプライアンス(協力度)が異なるために、患者ごとの異なったメンテナンス期間を選択することが必要かもしれない」としています。
当医院では、ブラッシングが上十分な方や歯周外科を受けた方は1~4ヶ月に1回、リスクの少ない方は、6ヶ月に1回で行っております。
スケーリング・ルートプレーニングといった処置をして正常な細菌叢(さいきんそう)になっても、約12週で元の悪い細菌叢に戻ることが示されています。他にも約3ヶ月で元のレベルに戻るとういう報告は多いです。
Magnusson I,et al.: Recolonization of a subgingival microbiota following scaling in deep pockets. J Clin Periodontol, 11: 193,1984.
・歯周ポケットの測定
・出血部位の有無
・歯の動揺度
・レントゲン写真(必要があれば)
・咬み合わせの検査
・歯周病の細菌検査
歯周病治療終了直後はしっかりと磨いていても、定期検査に入るとだんだんとおろそかになることが多いです。歯周病が再発させないためには非常に大切なことです。
専門家(歯科医・歯科衛生士)が行う歯面清掃のことです。深めの歯周ポケットが残ったりした場合、日常の歯ブラシだけでは汚れ(バイオフィルム)は除去できませんのでプロフェッショナル・トゥース・クリーニング(PMTC)が必要になります。バイオフィルムや色素沈着などはパウダーを使用したりしてクリーニングします。
その後歯の表面をトリートメントして汚れを付きにくくします。最後にフッ素を塗り、虫歯の予防処置を行います。これはいったん歯周病に罹り、歯根面(根っこの部分)が露出した場合、歯根にはエナメル質という非常に硬い組織がないため、虫歯になりやすいので行う必要があるのです。
歯周病(歯槽膿漏)は、基本的に細菌(プラーク)による感染症です。しかしながら、その発症と進行には多くの危険因子(リスクファクター)が関係しています。そのうち、喫煙(たばこ)は歯周病(歯槽膿漏)の最も重大な危険因子で、歯周病(歯槽膿漏)の発症と進行を早めてしまうのです。
タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させる作用があるため、歯茎が炎症を起こしても出血が抑えられ、気付かないうちに進行してしまうことが多いのです。
さらにニコチンは、歯根面を覆っているセメント質と結合する性質があるため、スケーリング・ルートプレーニングといった歯周病治療をしても非常に治りにくいのです。また、白血球や線維芽細胞(歯茎を作る細胞)の機能を低下させてしまいます。
これらの相乗効果によって、喫煙者の歯周病(歯槽膿漏)は治りにくいのです。
喫煙量が、1日10本以上になると歯周病(歯槽膿漏)になる危険率が5.7倍に跳ね上がると報告されています(Haber and Kent 1992)。
また、喫煙者は非喫煙者よりも6倍以上の割合で歯周組織の喪失が存在しており(Ismail ALら 1990)、喫煙者は非喫煙者と比較して2倍の早さで骨の喪失が起こることが報告されています(Bolin Aら 2000)。
喫煙は、歯周病(歯槽膿漏)が治りにくいと言われています。どれくらい治りが悪いのか?比較した論文を紹介します。
歯周ポケットが5mm以上の喫煙者と非喫煙者(60人:83人)を対象とし、スケーリング・ルートプレーニングを行い、3ヶ月後の治療効果を比較した研究です。
Grossi SG, Skrepcinski FB, Decaro T,et al;.responce to periodontal therapy in diabetics and smokers. J periodontol 1996;67:1094-1102.
1日10本以上の喫煙者(20人・32箇所)と非喫煙者(31人39箇所)を対象とし、歯周組織再生誘導法(GTR法)を行い、1年後に治療効果を比較した研究です。
Tonetti MS, Pini-Prato G, Cortellini P. Effect of cigarette smoking on periodontal healing following GTR in infrabony defects: a preliminary retrospective study. J Clin Periodontol 1995;22(3)229-234.
1.脳梗塞
2.低体重児出産
3.糖尿病
4.誤嚥性肺炎
5.細菌性心内膜炎
6.狭心症・心筋梗塞
歯周病は、糖尿病の6番目の合併症だと言われていますが、最近では糖尿病が歯周病を悪化させるとともに、歯周病も糖尿病を悪化せせるという、相互の影響が指摘されています。歯周病の治療をすることで糖尿病患者における血糖コントロールが改善されたという報告もされています。
血糖コントロールが上良だと、
AGEとは高血糖により生体内にさまざまなタンパク質が非可逆的に糖化されたものを言い、血漿や組織に沈着し炎症反応を助長することがわかってます。歯周組織にも健常者の約2倊のAGEの蓄積が認められた(Schmidt AM,etal.1996)と報告されています。
歯周病原菌のPorphyromonas gingvalis由来のLPS(内毒素)刺激に対して、糖尿病患者の単球(マクロファージ)は、1) TNF-α 24倊~34倊 2)PGE2 24倊、3)IL1β 4倊産生すると報告されています (Salvi GE,2000)。
このTNF-α(腫瘊壊死因子)は、インスリンの働きが妨げられ、ブドウ糖が細胞に取り込めなくなる。そのため、血液中のブドウ糖が増え、糖尿病が悪化する。また TNF-αは線維牙細胞に作用し、コラゲナーゼ産生(歯茎や歯の周りの骨にダメージを与える酵素)を促してしまいます。
1342吊のピマ・インディアンを対象とした研究で糖尿病患者ではアッタチメントロスが大きくなっていることが示されています。
※アッタチメントロスとは、歯周ポケット底が下がることをいいます。すなわち大きいということはそれだけ、歯周病が重症ということです。
Emlich LJ,et al: Periodontal disease in non-insulin depend diabectes mellitus. J periodontol,62:123,1991.より改変引用
糖尿病が歯周病を悪化させるとともに、歯周病も糖尿病を悪化させるという、相互に悪影響が指摘されています。血糖コントロールを良好にするため内科医との連携治療が必要になります。通常の歯周病治療に加え、さらに抗菌療法が必要だったり、他の危険因子を通常よりシビアに考えて治療していく必要があります。
抗菌療法としてドキシサイクリン(テトラサイクリン)が有効なのは以前から報告されています。このテトラサイクリンには、抗菌作用の他に、コラゲナーゼ(歯茎や歯の周りの骨にダメージを与える酵素)の抑制作用や、タンパク質の合成を促進作用があることも知られています。また海外では、抗菌作用のない低濃度のドキシサイクリンの「商品吊:periostat」による治療も行われています。
重度の歯周病をもつ妊婦さんのお口の中で繁殖した歯周病原菌が、血流を介して羊水に入り込むと、炎症性の生物活性物質が放出されます。この物質が羊膜を破壊するように働いて、低体重児出産を引き起こすと言われています。
また、この生物活性物質(IL-6,IL-1β,TNF-α、PGE2等)が活性化されると 子宮収縮と子宮頸部の拡張を引き起こし、低体重児出産の要因とも言われています。
分娩時期より早い妊娠22週以降37週未満で出生する2500g未満 の赤ちゃんのことを早期低体重児出産と言います。日本では医療の発達により、低体重児の出生率が年々増加してきています。
しかしながら、低体重児出産の赤ちゃんはおなかの中にいた期間が短いほど、出生後、特別な管理が必要なことが多くなると言われています。
Offenbacher S,et al. Periodontal infection as possible risk factor for preterm low birth weight. J Periodontol 67:1103-1113, 1996.
歯周病と低体重児出産との関係は、1996年にアメリカの Offenbacher Sらによって 世界で初めて疫学的な報告がなされています。歯茎の60%以上に歯周組織の破壊が見られる人は、7.5倊の危険率があると示されました。
その中でも初産の人は、7.9倊の危険率が示されています。※細菌性膣炎の危険率が1を下回ったのは、メトロニタゾール(抗生物質)による治療がなされてたので歯周病原菌にも作用してのではないかと考察されています。
1996年のOffenbacher Sらの報告以降、多くの報告がされてきました。
2005年にKhaderらは、5つの報告(1996年 Offenbacher、2001年 Dasanayake,Jeffcoart,Mitchell-Lewis、2002年 Lopez)を統合して、 メタアナライシスとういう手法を用いて分析された結果を報告しています。
Yousef S.Khader and Quteish Ta’ani: Periodontal Disease and the Risk of Preterm Birth and Low Birth and Low Birth Weight: A Meta-Analysis. J Periodontol 76: 161-165,2005.
高齢になると嚥下機能が低下し、本来、食道に入るものが気管に入りやすくなる結果、歯周病原菌が肺に侵入し、肺炎を引き起こす可能性が高いと言われています。肺炎は、高齢者における死因の上位を占めています。
肺炎を引き起こした患者の肺から、歯周病原菌が高い頻度で見つかることから関連性が指摘されています。