皮膚に赤い部分がある、かゆいなどの症状があり、「皮膚科を受診しても治らない。」「アクセサリーなどを外しても治らない。」などはお口の中の金属が原因かもしれません。
異物に対して、体を守ろうとする免疫反応が、特定の異物に対して過剰に反応することを、アレルギーと言います。金属アレルギーは、金属が汗や唾液によってイオン化され、皮膚を通過して体内に入り、体体が異常な反応をする状態です。
指輪やネックレス、腕時計といったアクセサリー類、衣服のボタンやベルトのバックル、下着の金具など、体が金属に触れる状況は、身の回りにたくさんあります。
歯科で使用される詰め物やかぶせ物の多くは,数種類の金属を組み合わた合金を用いることで強度や耐変色性・耐食性を高めています。
それでも口の中では、歯垢中に潜む細菌が作り出す酸や唾液に、常に接触しています。また飲食物の酸や口の中の温度変化による影響、詰め物・かぶせ物同士の接触・摩擦などによりざらついた面から腐食することがあります。つまり口の中は金属にとって非常に過酷であり、このような環境の中では金属は金属イオンとして溶け出します。
金属イオンは、そのほとんどが吸収されずに便や尿、汗などで排出されます。しかし、ごくわずかな金属イオンが少しづつ蓄積して体内のタンパク質と結合してアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)となることがあります。
このアレルゲンを身体が異物として認識することで、アレルギー症状が出ることがあります。
また、吸収・蓄積されたアレルゲンが身体の他の部位にアレルギー症状を起こす場合があります。中でも掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)と呼ばれる手足の先などに無菌性の嚢胞などが繰り返しできる病気などは、口腔内の金属との関連が特に指摘されています。
また、吸収・蓄積されたアレルゲンが身体の他の部位にアレルギー症状を起こす場合があります。中でも掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)と呼ばれる手足の先などに無菌性の嚢胞などが繰り返しできる病気などは、口腔内の金属との関連が特に指摘されています。
直接金属が触れた部位で起こる金属アレルギーを言います。
製品から原因アレルゲンが溶出しやすい夏季、発汗期に、傷がある部位などでは よりアレルゲンが吸収しやすくなるので発汗と擦れの関連で生じることが多いです。
アクセサリー、時計、眼鏡の他、ベルト、ハンドバックの金具、財布の留め金、ジッパー、下着のホック、金属ボタン、コイン、ドアノブなど、ステンレス製調理器具など様々の日用品が原因になることがあります。
歯科治療においても同様に金属が口腔粘膜に触れた部位で起こることもあります。通常皮膚のようにかゆみを伴うことはほとんどありませんが、口腔粘膜が赤くなったり、白くなったりすることがあります。舌に生じると味覚障害を起こすこともあり、まれに強い痛みや灼熱感を起こすこともあります。
治療で使用された金属が溶け出して(イオン化)体内に吸収されてから離れた部位で起こるアレルギー反応です。手や足に起こるかぶれや湿疹(しっしん)等の症状です。
口腔内にある金属がイオン化し、体内に侵入すると、そのほとんどは、便として体外に排出されます。
しかし、数%程度は腸管から吸収され、その一部は、汗の中に排出されるのです。手のひらや足のうらは、汗腺が多い部位なので、全身性金属アレルギーが起こりやすくなるのです。
そのため、汗をかきやすい夏場には、金属アレルギーの症状が強く起こりやすくなります。
現在、保険診療で用いられる詰め物やかぶせ物用の金属は、金銀パラジウム合金と銀合金です。金銀パラジウム合金はメーカーにより金12%以外の割合に違いがあります。よく用いられるものでは銀50%、パラジウム20%、銅17%とその他の金属でできている合金です。
銀合金には2種類(第1種、第2種)があります。日本工業規格(JIS)では第1種はインジウム含有量5%未満で白金族元素を含まないもの、第2種はインジウム含有量5%以上で白金族元素10%以下のものと規定されています。いずれにしても銀が主体となるため酸化して黒く変色しやすい性質があります。
その他にアマルガムという水銀を主とする合金もありますが、近年は使用されなくなっています。また2020年より奥歯のかぶせ物にはチタンが保険適応になっいます。
義歯や矯正治療にはコバルトクロム合金、ニッケルクロム合金などのノンプレシャスメタル(非貴金属、卑金属)と言われるものや、ステンレス鋼、白金加金、チタンなども用いられます。
・接触性口内炎・扁平苔癬
・肉芽種性口唇炎・口囲皮膚炎
・異汗性湿疹・扁平苔癬・掌蹠膿疱症・貨幣状湿疹・全身の皮膚炎・痒疹
・掌蹠膿疱症・肉芽種性口唇炎・IgA血管炎・ベーチェット病・滴状乾癬・結節性紅斑・特発性色素性紫斑・貨幣状湿疹・痒疹
当院受診・診査
皮膚科紹介
皮膚疾患の鑑別
必要に応じてパッチテストなどの検査、確定診断当院再受診
検査結果および診断結果により皮膚科医と連携し、原因金属の除去、他の修復材料を置換する。歯性病巣(歯周病や根尖性歯周炎)が疑われる場合は治療定期検診
接触性皮膚炎診療ガイドライン(2020)によるとパッチテストは、アレルギー性接触皮膚炎の診断に最も有用な検査法であり、原因となる接触物質(アレルゲン)を明らかにすることにより、難治性・再発性のアレルギー性接触皮膚炎の根治が可能となるとされています。1週間で4回通院が必要です。
1.ニッケル(Ni) | 硫酸ニッケル5% |
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2.コバルト(Co) | 塩化コバルト2% |
3.クロム(Cr) | 重クロム酸カリウム0.5% |
4.水銀(Hg) | 塩化第二水銀0.05% |
5.金(Au) | 塩化金酸0.2% |
6.パラジウム(Pd) | 塩化パラジウム1% |
7.銀(Ag) | 臭化銀2% |
8.白金(Pt) | 塩化白金酸0.5% |
9.亜鉛(Zn) | 塩化亜鉛2% |
10.マンガン(Mn) | 塩化マンガン2% |
11.インジウム(In) | 三塩化インジウム1% |
12.イリジウム(Ir) | 四塩化イリジウム1% |
13.銅(Cu) | 硫酸銅1% |
14.アルミニウム(Al) | 塩化アルミニウム2% |
15.スズ(Sn) | 塩化第二スズ1% |
16.鉄(Fe) | 塩化第二鉄2% |
診断には原因を確定するパッチテストが有用ですが、その施行方法、判定方法、結果の考察、患者さんへの生活指導、社会へ結果を還元する一連の診療技術はある一定期間の修練が必要です。
原因を明らかにする有力な検査方法であるパッチテストは手間と時間がかかり、保険点数も低く一般皮膚科診療でパッチテストは活用されているとは言えない状況です。しかしながら、パッチテストより確実かつ有用な原因を解明する検査方法はいまも存在しません。(日本皮膚科学会HPより)
パッチテストの感度と特異度は70~80%という報告があり、ある程度の割合で偽陽性・偽陰性が存在してしまいます。パッチテストで陽性判定がでても、単純に金属を外せばよいわけではありません。皮膚科・歯科・耳鼻咽喉科と連携が必要で、優先順位の高い治療を検討する必要があります。
そのため当院では医科歯科連携を大切にしています。
血液検査(DLST)も行われることがあります。しかしながら、血液検査では、Pd、Au、Ni、Coの4元素のみで有効と言われ、血液検査のみでは金属アレルギーの診断としては十分ではありません。
パッチテストの結果が陰性であっても、症状から金属アレルギーが疑われる場合、チャレンジテストを行う場合があります。金属を多量に含む食品を患者さんに食べてもらい、かゆみや発疹を誘発させるテストです。
チャレンジテストが実施される前に必ず医師の指示のもと行うことが必須で十分な注意が必要です。
掌蹠膿疱症はウミが溜まった膿疱と呼ばれる皮疹が手のひらや足の裏に数多くみられる病気で、周期的に良くなったり、悪くなったりを繰り返します。ときにはスネや膝にも皮疹が出ることがあります。皮疹は小さな水ぶくれが生じ、次第に膿疱に変化します。
その後、かさぶたとなり、角層(皮膚の最表層にある薄い層)がはげ落ちます。後にこれらの皮疹が混じった状態になります。出始めは、よくかゆくなります。また、胸痛などの関節炎を生じることがあります。
原因は不明と言われていますが、1日20本以上の長期喫煙者に多いという報告もあります。病巣感染(扁桃炎、虫歯、歯周病、根尖病巣、副鼻腔炎など)がみられる例では治療により治癒軽快が認められることがあります。この疾患の治療は皮膚科・歯科・耳鼻科との連携は重要で、悪化要因を探しながら、治療を進めていく必要があります。
近年、CADCAM冠やチタン冠が保険導入されましたので、ケースによって比較的安価で金属を置換することができるようになっています。
当院ではセレックシステムも導入していますので、ケースによっては1日でセラミック修復も可能になっています。使用される素材は毎年開発されてきていて、常に最先端の情報を専属歯科技工士と共有して、評価の高い素材を使用するように努めています。