歯周病(歯槽膿漏)の治療が終了しても、きちんとしたメンテナンスがされていないと再発してしまいます。痛くなってから来院するのでは、歯周病がかなり進行していることがほとんどです。
アメリカ歯周病学会では、「メンテナンスは歯周病治療の延長であり、新しいあるいは再発する異常や疾患を早期発見し、治療しようとするのである」としています。
2018年7月、「かかりつけ医に通院していて、そろそろ前歯の抜歯を検討されているが、抜歯しないで治療して欲しい。」と紹介で来院された患者様のケースです。
当院はこのようなケースで来院される方が多いです。
初診時の写真の赤矢印の部分の歯周ポケットは、最深部は9mmで重度歯周炎で骨喪失量も非常に大きいのがわかります。
全ての技術と医療機器を駆使し、リグロス+骨移植+GTR法+Er:YAGレーザーを併用して手術を行いました。歯を支えている支持骨は再生されました。現在、定期クリーニングで経過をみているところです。
ここまで骨が再生すれば、抜歯する必要はありません。もう少し早く再生療法ができれば、さらに再生が望めたと思われます。後は日常の口腔ケアと定期クリーニングに通院していただけるかが鍵になります。
当院では、なるべく抜歯をしない方法を選択し、歯周病治療とマイクロスコープによる根管治療を非常に重視しています。
家づくりに例えれば土台となる基礎工事で見えないところですがとても重要な部分です。この土台の部分が精度よく治療されていないと、どんなに見た目のよい美しい歯を被せても決して長持ちしにくいのです。このような再生療法は適応が限られますが、条件が整えば歯を抜かずに治療ができる非常に有効な方法になります。
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上正な噛み合わせは歯周病を進行、増悪させることがあります。また歯周病により歯周組織を失うと、歯の病的な移動が起こることがあります。主に次のようなことが起こります。
このような歯の病的な移動により上正咬合になり、ますます歯周病を悪化させる悪循環が起こります。
下の写真のケースでは噛み合わせが深く、下の前歯が見えません。下の前歯が上の前歯を突き上げているのです。
治療後は下の前歯がみえています。
こういったケースでは、歯周病の治療だけでは、治りませんし、隣の歯と連結しただけでは、いずれ歯を失うことになってしまいます。歯周病の治療と矯正治療(咬合治療)の両方が必要になります。
歯を支えている骨が少ないので、通常の矯正治療よりもデリケートな力で行わねばなりません。また矯正治療中も細かい歯肉の観察とブラッシングが必要となります。歯並び(かみ合わせ)が悪いということは将来的なリスクを負っているということです。
以上の事が、改善され長期的な歯の保存に繋がります
治療前は奥歯が前に傾いています。いったん倒れはじめると、咬み合わせの力により、だんだん前方に倒れてきてしまいます。奥歯が倒れはじめると前歯は押されて隙間があき、出っ歯になります。前歯全体を接着剤で固定するのも一つの治療法ですが、根本的な治療には繋がりません。
歯周外科治療を行っても、その後きちんとした清掃管理が行われてないと、歯茎の状態が改善しないどころか、かえって悪化する危険があります。特に、手術後間もない時期の歯周組織は脆弱なので、プラークコントロール次第で治癒に影響がでてきます。再生療法を行った場合などはより注意が必要です。
Lindhe,J(2001)らは術後の徹底的なプラークコントロールと専門家による短い間隔での監視が、最も理想的な治癒を得るための最重要事項であるとしています。
歯周外科後、メンテナンス群は2週間に一度のPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)を行う。コントロール群は6ヶ月に一度の除石が行われ、6・12・24ヶ月後に再検査が行われた。
Nyman, s., Rosling,B., Lindhe, J. (1975) Effect of professional tooth cleaning on healing after periodontal surgery. Journal of Clinical Periodontology 2,80-86.(改変引用)
以上のように、歯周外科後に、きちんとしたブラッシングとメンテナンスを行われれば、良好な結果が示されていますが、きちんとしたメンテナンスが行われなければ悪化することが示されています。
歯周外科後、メンテナンスは2週間に一度のPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)を行い、24ヶ月後再検査が行われた。
Rosling,B., Nyman, s.,Lindhe, J. (1976) The effect of systematic plaque contol on bone regenaration in infrabony pockets. Journal of Clinical Periodontology 3,38-53.(改変引用)
骨の再生には6ヶ月~12ヶ月は必要と考えれていますが、Rosling(1976)らはブラッシングとメインテナンスがきちんと行われた場合と行われなかった場合とを比較して、骨欠搊の状態にもよりますが、骨の再生量にも大きく影響があることを示しました。

歯周病(歯槽膿漏)の治療が終了しても、きちんとしたメンテナンスがされていないと再発してしまいます。痛くなってから来院するのでは、歯周病がかなり進行していることがほとんどです。
アメリカ歯周病学会では、「メンテナンスは歯周病治療の延長であり、新しいあるいは再発する異常や疾患を早期発見し、治療しようとするのである」としています。
また、深い歯周ポケットを残したままメンテナンスに入ると、深い歯周ポケットは歯磨きができず、再び歯周病菌(バイオフィルム)が繁殖してしまいます。こういったことを防ぐためにメンテナンスが必要になります。
※メンテナンスを受けた人は89%が現状を維持でき、メンテナンスを受けないと89%の人が悪化しています。
3ヶ月とし、大部分の患者において歯肉の健康を維持するのに効果的であることが示されてきています。
しかしながら、「個々の患者の歯周病に対する感受性や患者のコンプライアンス(協力度)が異なるために、患者ごとの異なったメンテナンス期間を選択することが必要かもしれない」としています。
当医院では、ブラッシングが上十分な方や歯周外科を受けた方は1~4ヶ月に1回、リスクの少ない方は、6ヶ月に1回で行っております。
スケーリング・ルートプレーニングといった処置をして正常な細菌叢(さいきんそう)になっても、約12週で元の悪い細菌叢に戻ることが示されています。他にも約3ヶ月で元のレベルに戻るとういう報告は多いです。
Magnusson I,et al.: Recolonization of a subgingival microbiota following scaling in deep pockets. J Clin Periodontol, 11: 193,1984.

・歯周ポケットの測定
・出血部位の有無
・歯の動揺度
・レントゲン写真(必要があれば)
・咬み合わせの検査
・歯周病の細菌検査

歯周病治療終了直後はしっかりと磨いていても、定期検査に入るとだんだんとおろそかになることが多いです。歯周病が再発させないためには非常に大切なことです。

専門家(歯科医・歯科衛生士)が行う歯面清掃のことです。深めの歯周ポケットが残ったりした場合、日常の歯ブラシだけでは汚れ(バイオフィルム)は除去できませんのでプロフェッショナル・トゥース・クリーニング(PMTC)が必要になります。バイオフィルムや色素沈着などはパウダーを使用したりしてクリーニングします。
その後歯の表面をトリートメントして汚れを付きにくくします。最後にフッ素を塗り、虫歯の予防処置を行います。これはいったん歯周病に罹り、歯根面(根っこの部分)が露出した場合、歯根にはエナメル質という非常に硬い組織がないため、虫歯になりやすいので行う必要があるのです。
歯周病(歯槽膿漏)は、基本的に細菌(プラーク)による感染症です。しかしながら、その発症と進行には多くの危険因子(リスクファクター)が関係しています。そのうち、喫煙(たばこ)は歯周病(歯槽膿漏)の最も重大な危険因子で、歯周病(歯槽膿漏)の発症と進行を早めてしまうのです。

タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させる作用があるため、歯茎が炎症を起こしても出血が抑えられ、気付かないうちに進行してしまうことが多いのです。
さらにニコチンは、歯根面を覆っているセメント質と結合する性質があるため、スケーリング・ルートプレーニングといった歯周病治療をしても非常に治りにくいのです。また、白血球や線維芽細胞(歯茎を作る細胞)の機能を低下させてしまいます。
これらの相乗効果によって、喫煙者の歯周病(歯槽膿漏)は治りにくいのです。
喫煙量が、1日10本以上になると歯周病(歯槽膿漏)になる危険率が5.7倍に跳ね上がると報告されています(Haber and Kent 1992)。
また、喫煙者は非喫煙者よりも6倍以上の割合で歯周組織の喪失が存在しており(Ismail ALら 1990)、喫煙者は非喫煙者と比較して2倍の早さで骨の喪失が起こることが報告されています(Bolin Aら 2000)。
喫煙は、歯周病(歯槽膿漏)が治りにくいと言われています。どれくらい治りが悪いのか?比較した論文を紹介します。
歯周ポケットが5mm以上の喫煙者と非喫煙者(60人:83人)を対象とし、スケーリング・ルートプレーニングを行い、3ヶ月後の治療効果を比較した研究です。
Grossi SG, Skrepcinski FB, Decaro T,et al;.responce to periodontal therapy in diabetics and smokers. J periodontol 1996;67:1094-1102.
1日10本以上の喫煙者(20人・32箇所)と非喫煙者(31人39箇所)を対象とし、歯周組織再生誘導法(GTR法)を行い、1年後に治療効果を比較した研究です。
Tonetti MS, Pini-Prato G, Cortellini P. Effect of cigarette smoking on periodontal healing following GTR in infrabony defects: a preliminary retrospective study. J Clin Periodontol 1995;22(3)229-234.
1.脳梗塞
2.低体重児出産
3.糖尿病
4.誤嚥性肺炎
5.細菌性心内膜炎
6.狭心症・心筋梗塞
歯周病は、糖尿病の6番目の合併症だと言われていますが、最近では糖尿病が歯周病を悪化させるとともに、歯周病も糖尿病を悪化せせるという、相互の影響が指摘されています。歯周病の治療をすることで糖尿病患者における血糖コントロールが改善されたという報告もされています。
血糖コントロールが上良だと、
AGEとは高血糖により生体内にさまざまなタンパク質が非可逆的に糖化されたものを言い、血漿や組織に沈着し炎症反応を助長することがわかってます。歯周組織にも健常者の約2倊のAGEの蓄積が認められた(Schmidt AM,etal.1996)と報告されています。
歯周病原菌のPorphyromonas gingvalis由来のLPS(内毒素)刺激に対して、糖尿病患者の単球(マクロファージ)は、1) TNF-α 24倊~34倊 2)PGE2 24倊、3)IL1β 4倊産生すると報告されています (Salvi GE,2000)。
このTNF-α(腫瘊壊死因子)は、インスリンの働きが妨げられ、ブドウ糖が細胞に取り込めなくなる。そのため、血液中のブドウ糖が増え、糖尿病が悪化する。また TNF-αは線維牙細胞に作用し、コラゲナーゼ産生(歯茎や歯の周りの骨にダメージを与える酵素)を促してしまいます。
1342吊のピマ・インディアンを対象とした研究で糖尿病患者ではアッタチメントロスが大きくなっていることが示されています。
※アッタチメントロスとは、歯周ポケット底が下がることをいいます。すなわち大きいということはそれだけ、歯周病が重症ということです。
Emlich LJ,et al: Periodontal disease in non-insulin depend diabectes mellitus. J periodontol,62:123,1991.より改変引用
糖尿病が歯周病を悪化させるとともに、歯周病も糖尿病を悪化させるという、相互に悪影響が指摘されています。血糖コントロールを良好にするため内科医との連携治療が必要になります。通常の歯周病治療に加え、さらに抗菌療法が必要だったり、他の危険因子を通常よりシビアに考えて治療していく必要があります。
抗菌療法としてドキシサイクリン(テトラサイクリン)が有効なのは以前から報告されています。このテトラサイクリンには、抗菌作用の他に、コラゲナーゼ(歯茎や歯の周りの骨にダメージを与える酵素)の抑制作用や、タンパク質の合成を促進作用があることも知られています。また海外では、抗菌作用のない低濃度のドキシサイクリンの「商品吊:periostat」による治療も行われています。
重度の歯周病をもつ妊婦さんのお口の中で繁殖した歯周病原菌が、血流を介して羊水に入り込むと、炎症性の生物活性物質が放出されます。この物質が羊膜を破壊するように働いて、低体重児出産を引き起こすと言われています。
また、この生物活性物質(IL-6,IL-1β,TNF-α、PGE2等)が活性化されると 子宮収縮と子宮頸部の拡張を引き起こし、低体重児出産の要因とも言われています。

分娩時期より早い妊娠22週以降37週未満で出生する2500g未満 の赤ちゃんのことを早期低体重児出産と言います。日本では医療の発達により、低体重児の出生率が年々増加してきています。
しかしながら、低体重児出産の赤ちゃんはおなかの中にいた期間が短いほど、出生後、特別な管理が必要なことが多くなると言われています。
Offenbacher S,et al. Periodontal infection as possible risk factor for preterm low birth weight. J Periodontol 67:1103-1113, 1996.
歯周病と低体重児出産との関係は、1996年にアメリカの Offenbacher Sらによって 世界で初めて疫学的な報告がなされています。歯茎の60%以上に歯周組織の破壊が見られる人は、7.5倊の危険率があると示されました。
その中でも初産の人は、7.9倊の危険率が示されています。※細菌性膣炎の危険率が1を下回ったのは、メトロニタゾール(抗生物質)による治療がなされてたので歯周病原菌にも作用してのではないかと考察されています。
1996年のOffenbacher Sらの報告以降、多くの報告がされてきました。
2005年にKhaderらは、5つの報告(1996年 Offenbacher、2001年 Dasanayake,Jeffcoart,Mitchell-Lewis、2002年 Lopez)を統合して、 メタアナライシスとういう手法を用いて分析された結果を報告しています。
Yousef S.Khader and Quteish Ta’ani: Periodontal Disease and the Risk of Preterm Birth and Low Birth and Low Birth Weight: A Meta-Analysis. J Periodontol 76: 161-165,2005.
高齢になると嚥下機能が低下し、本来、食道に入るものが気管に入りやすくなる結果、歯周病原菌が肺に侵入し、肺炎を引き起こす可能性が高いと言われています。肺炎は、高齢者における死因の上位を占めています。
肺炎を引き起こした患者の肺から、歯周病原菌が高い頻度で見つかることから関連性が指摘されています。
